「つまり、自分にできないことをやってのける高槻に、あこがれてるってことだな」       
 

そうやって、朝子はペタリとひとの気持ちに勝手な名前を貼ってしまう。
 

人の意見をばっさり切ったり、いつでもどこでも参考書を広げたり、

空気を読まない朝子の周りには、最初から人がいなかった。

他人に関心がない彼女はそれでも気にならないらしく、平気な顔をしている。
 

人と関わるのは怖いけれど、だからといってひとりでいるのも寂しいわたしは、

朝子が何も言わないのをいいことに、彼女に話し相手をしてもらっているのだ。
 

沈黙は苦手だから自分の話をして、その都度ばさりと切られて。

それでも勉強の邪魔だと言われたことは一度もなかった。
 

地味で暗い見た目なのに、よくしゃべるわたしは、

朝子から「ネクラ詐欺」なんて呼ばれることもしばしばだ。


「あの連中は、誉められた性格じゃない」
 

朝子の声に振り返る。