わたしは、学校で目立たずに生きていこうと決めていた。
誰かに期待して、傷つくのは、もう嫌だから。
だけど、私だって、いろんな世界を知りたい。
殻から、出たい……!
――お前を救えるのは、お前だけだ――
置き所がなく震えていた心臓が、カチッと、何かにはまったような気がした。
「――いいよ」
口から、勝手に言葉がこぼれる。
「わたし、星野くんと付き合う」
高槻くんの広い背中が、驚いたように振り向いた。
形のいい唇が、わずかに震える。
「な……何言って」
「ほんと!? 奈央ちゃん俺と付き合ってくれんの!?」