わたしを庇うように立った高槻くんが、感情を押し殺した低い声を響かせる。


「セイ、悪いけど、奈央は俺と付き合ってる」

「はあ? なんだよそれ! ふざけんなよ! レオ、奈央ちゃんのこと知らねえっつってたじゃねえか!」


黒髪の、背の高い、大きな背中に釘付けになる。


呼び捨てで名前を呼ばれたことにも驚いたけど、それ以上の衝撃を受けて身体が動かなかった。



何かとろりとした甘い感覚が、胸に広がっていく気がする。

真っ黒で、甘い、毒入りのハチミツみたいな――



――復讐してやれよ。



翔馬の声が、頭のなかでぐるぐる回ってる。


駅のホームで、今にもつかみ合いそうな雰囲気を漂わせているふたりの男子。


罰ゲームを発案した星野彗と、


それを実行した高槻礼央……。