「ここ、俺が一番好きな場所なんだ」


高槻くんは遠くの木々を眺めながらぽつりと言う。


風に揺れる木々のざわめきだけが漂うこの場所の、何をそんなに気に入っているのか、

正直に言ってわたしにはまだ分からなかった。


季節の訪れや自然が好きだとしても、この場所には鉄柵や自動販売機があって、

自然と一体になれるほど心安らげるとも思えない。


「高槻く」


言いかけた時、


「きた」


彼が短く呟いた。


「え、何が」


その瞬間、遠くから何か音が聞こえることに気づく。


ごおっと嵐が近づいてくるような音――