「あ、ありがとう。待って、いまお金」
「いいよ、今日付き合ってくれたし」
「え……あ、ありがとう」
促されるまま、わたしは高槻くんとベンチに座った。
不思議な場所だった。
本当に何もない。
歩いてきた細い一本道と、その両側の林と、どう考えても越せそうにない背の高い鉄柵と、
草に覆われただだっ広い土地。
「寒くない?」
尋ねられて、わたしは慌ててうなずく。
「うん、平気」
駅から歩いてきたばかりだから、身体はぽかぽかと温かいし、
手の中のカフェラテもわたしの体温を高めてくれる。
日が暮れると空気も冷えてくるのかもしれないけれど、
となりに高槻くんが座ってるだけで、寒さを感じない気がした。