1時間近く電車に揺られていたかもしれない。
高槻くんは降り立った駅から続く小さな商店街を抜けると、ひたすらまっすぐ歩き始めた。
小さな町のようで、10分も歩くと周囲に建物らしき建物が見えなくなる。
あるのはアスファルトの道と、雑木林と、電柱と外灯くらいで、
近くを大きな道路が走っているのか、車の音だけが聞こえてくる。
「あの、行きたいとこって……?」
一段と日が短くなって、15時過ぎでも太陽はすでに傾きはじめていた。
「もう少し、先だから」
わたしの前を行く大きな背中は、森のあいだの一本道のような通りを振り返ることなく歩き続ける。
いったいどこに行くつもりなんだろう。
だんだん樹海の奥深くに潜っていってるような気分になる。