駅前のハンバーガーショップで腹ごしらえをしてから、高槻くんの〝行きたいところ〟に向かうために電車に乗った。
人がまばらな車内で並んで座り、窓の外の景色を眺めていると、となりから低い声が落ちる。
「なんかごめん。弟の発表会まで付き合わせて」
「え、そんな。普通に楽しんじゃった」
とっさに言うと、高槻くんはかすかに頬を緩めた。
ガタンゴトンという電車の振動にあわせて、心臓が脈打ってる。
肩が触れそうな距離は、わたしを落ち着かない気分にさせて、口数を奪う。
「遼に、絶対見に来てくれって言われてたからさ」
「そんな日に、出かける約束しちゃってよかったの……?」
座席から伸びた長い足がわたしの膝に触れそうで、どきどきしながら言うと、
「ふ」と静かに笑ったような音が聞こえた。