演奏が終わると、会場にふたたび拍手が沸き起こる。

ステージ上でぺこりとお辞儀をして遼くんが舞台そでに消えたのを確認すると、高槻くんは立ち上がった。


「出ようか」

「え、遼くんとかお母さんたちに声かけなくていいの?」

「あの両親の息子だと、周りに思われたくないから」


さらりと吐いたセリフにはトゲがあるのに、なぜか深い愛情のようなものを感じてしまった。

仲がいいからこそ言える言葉、という感じがする。



市民ホールから外に出ると、冷えた空気に気持ちが凛とする。

真上から注ぐ太陽を見上げて、高槻くんはわたしを振り返った。


「もう一か所、付き合ってもらいたいとこがあるんだけど」

「うん、いいよ。どこ行くの?」

「……その前に、腹、減らね?」