映画館のように椅子が段々に並んでいるその正面に、ライトに照らされたステージが見える。
客席にいるのはほとんどが家族連れで、
子どもたちはドレスを着ていたり、蝶ネクタイをつけていたり、みんなとてもオシャレをしている。
圧倒されながらステージを見ると、そこには一際目立つグランドピアノが一台、置かれていた。
「ピアノの……発表会?」
高槻くんがうなずくのと、会場にアナウンスが入るのが同時だった。
『高槻遼くん。小学校2年生です』
舞台そでから可愛らしいスーツに身を包んだ遼くんが現れると、会場に拍手が起こった。
そのあいだに後ろのほうの空いている席に移動し、高槻くんと並んで座る。
「遼くん、ピアノやってたんだ」
ステージ上の小さな身体は、真っ黒く輝くグランドピアノに今にも飲み込まれてしまいそうだ。
拍手が止んで静まりかえる会場に、ポロンと、可愛い音色が響きはじめる。