歩いているあいだ、ふたりとも何も話さなかった。


頬を染めるみたいに赤くなった紅葉の葉っぱに、真っ青に続く高い空。


訪れる冬の気配と、手のひらのぬくもりを感じながらしばらく歩くと、高槻くんは足を止めた。


「ここ」


そこは学校の体育館にも似た市民ホールで、わたしは連れられるまま、入り口のドアをくぐった。


「高槻くん、ここって」

「今日、遼の発表会なんだ」


腕時計に目を落とし、「そろそろだ」と呟いて高槻くんは階段を上りはじめる。


「遼くんの発表会って、なんの――」


高槻くんはもったいぶるような笑みで答え、会場の重い扉を開いた。