冷えた空気の海を、はぐれないようにふたりで渡るみたいに、しっかりと繋がれた手。
歩きながらでも、自分の胸の鼓動をはっきり感じることができた。
わたし、高槻くんと、手を繋いでる。
腕をつかまれたり、手を引っ張られたことはあっても、
こんなふうに手のひらでしっかり彼のぬくもりを感じたことはない。
緊張して、自分の歩き方が変になってるんじゃないかと心配になった。
ほんの少し前を歩く高槻くんの顔は見えない。
でも耳がいつもより少し赤くなってるような気がする。
どうして急に、手なんて繋ぐの。
心臓を落ち着けるように、空いたほうの手で胸を押さえた。
なんでだろう。
嬉しいのに、苦しい。
冬を予感させる風と、太陽の暖かな日差しに包まれて、高槻くんの手は、どこまでも優しい。