わたしの姿を見て、高槻くんは一瞬驚いたようにまばたきをし、それから目元を優しく崩した。
たぶん、他の人から見れば小さな変化でしかないんだろうけれど、
わたしには普通の微笑みに見えて、きゅっと胸がきしむ。
初めて見る高槻くんの私服姿は、白い薄手ニットと黒のカーゴパンツで、落ち着いた雰囲気が彼によく似合っていた。
というか、かっこよすぎて直視できない。
「ど、どこに行く?」
足元を見つめながら言うと、すぐに低い声が耳に入る。
「行きたいとこあるんだけど、いい?」
「いいけど、どこに」
伸びてきた手が指先に絡んで、わたしははっと顔を上げた。
大きな手から、熱が伝わる。
わたしがその表情を確かめる前に、高槻くんは通りを歩き出した。