「地味なブスだと思ってたやつがすげえ可愛くなって、しかもそいつにこっぴどく振られたら、男のプライドなんてズタズタだよ」


夕日に照らされた高槻くんの顔が、ふっと頭をよぎる。

まっすぐに視線を送ってきた彼の、真っ黒な瞳。


「でも、わたし……」

「奈央。お前は変われる」


不意に真面目な声を出して、兄は言った。


「もともと活発なタイプだっただろ。あの頃を思い出して笑えばいい」


対向車のライトに浮かびあがった翔馬の顔は、真剣だった。

明るすぎる茶色の髪が不自然に見えるほど、兄の表情は今まで見たことがないくらい引き締まっている。

黒い瞳に信号の青を光らせながら、はっきりと言う。


「お前を救えるのは、お前だけだ」

「え……」

「誰かひとりでも、自分を好きになったヤツがいるんだって思えれば、他人なんかこわくねえ」