翔馬にだけは言われたくないけれど、今すぐ金を返せと言われても困るので黙っておいた。


ショッピングモールの立体駐車場を出ると、外はもう真っ暗だ。

空腹を覚えて空っぽのお腹を押さえたら、ふと高槻くんの家のダイニングテーブルを思い出した。


彼が作ってくれたチャーハンは、シンプルだったけれど、すごく美味しかった。

優しい味と、高槻くんの照れた顔を思い出していると、


「よし、明日はおもいっきり可愛くして出かけろよ。罰ゲーム野郎なんざメロメロにしてやれ」


赤信号で止まった兄が、後部座席の荷物を見てにやりと笑った。


「そんですっかり自分に惚れさせてから容赦なくぶった切る。これぞ最高の復讐!」


はっはっはと悪の親玉みたいな笑い方をする兄を見てると、ため息がこぼれる。


「ぶった切るって……なに」

「こっちから振ってやるって意味に決まってんだろ」


ハンドルを操作しながら、翔馬はフロントガラスの向こうに目を据えた。