後悔した。




もう、元には戻れない。


戻る事は、出来ない。




もう、もう、もう。




戻れないのならいっそ。



この恋を。




最初で最後の恋を




壊してしまおう。
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入学式。




これから三年間、私の通う高校に、私と同じ中学の人はいない。




何故なら。


私は、中学の頃にいじめに遭っていた。


この、生まれつき、茶色い髪の毛の所為で。




そんなもの、染めればいい事だと皆は思うかもしれないけれど、


髪の毛を染めるっていうのは、髪の毛が傷むし、


それに手間もお金も掛かる。




だから、私は黒色に染めなかった。




そしたら、「生意気なのよ」って、いじめられた。




そのいじめの内容は、とても口に出したくないようなもので。


嫌で嫌で、気持ち悪くて堪らなくって。




だから、私は


この高校に来た。
校長先生の長い長い話を聞き終えて、私は、これから一年間お世話になる教室に入った。




…やっぱ、中学の時の教室とは、どこか雰囲気が違うなあ。




周りには、知らない人ばかり。




……き、緊張してきた。




うぅ…。




自分の席に座りながら、頭の中でうろたえていると、


私達の担任の先生が入ってきた。




「えー、このクラスの担任の、南林典孝だ。


よろしく」




南林先生は、ちょっと痩せた、四十代半ば位の人だった。


声は、かなり大きい。




「えー、それではー、一人ずつ自己紹介でもしてもらおうかな」




えっ!?


じ、自己紹介……!?
「じゃあ、出席番号順に自己紹介してもらおうかー。


じゃあ、相澤から」




私の出席番号は七番だから……。


…前の方だ。


うぅ……嫌だなあ……。




だけど、一番最初とか、一番最後じゃないから、まだマシだよね…。


それに、最初の方だったら、早く終わって、後は解放される訳だし…。


うん…。




そんな事を考えている間にも、




「相澤克義です。


よろしくお願いします」


「青山美那子です。


美術部に入部したいと思っています、よろしくお願いします」




と、皆次々と自己紹介をしていく。
す、すごい…。


何で、皆…こんなにも堂々と自己紹介が出来るのだろう……。




ごく普通の、当たり前の事なのだろうけれど、


中学で二年間いじめられていて、すっかり臆病な性格になっていた私には、到底無理だろう。


こんな、他人ばっかりのところで発言するなんて………。




と、悶々としている内に、




「じゃあ、片岡ー」




南林先生が私の名前を呼んだ。




とうとう、私の番が来てしまったのだ。
「はっ、はい!」




慌てて、私は立った。




皆の視線が、私の方に集まる。




嗚呼……は、恥ずかしいっ!!!




「か、片岡愛理ですっ!よ、よろしくお願いしますっ」




言う事だけ言うと、私は素早く席に着いた。




「じゃあ次ー木戸ー」




はあ…はあ…………。




あー…緊張したあ…………怖かった……。


緊張し過ぎて、死ぬかと思ったよ……。




うぅ……何か変な発音になった気がするし、すっごい噛んだり、どもったりした気がする…。




はあ…自己紹介すらまともに出来ないなんて…。