「えっ、ばあちゃんが?いつ?」


彼の背中を見つめていると、深刻そうな声を出したので、私もなんとなく状況が把握できた。


「はぁ?それどういうこと?たらい回しってことかよ・・・」


たらい回し?


救急搬送時の病院のたらい回しが問題になっているけど、それと関係あるの?



「・・・・・・何ヶ所くらい?」


私が考えていることは、間違っていないのかもしれない。


私は何もできずに、一人であたふたし、部屋の中をキョロキョロと見回していた。


「10ヶ所?」


えっ、10ヶ所も断られたってこと?ありえない。


「・・・・・・もし、すぐに病院に搬送されていたら助かってたかもしれないのか?」


苦しそうな言葉が部屋中を駆け巡る。


そして、私も完全に内容が把握でき、胸が痛みだした。



「うん、わかった」


そう、静かに言うと、電話を切り「はぁ・・・」と大きな溜息をついて、うなだれた。


私は、どうすれば・・・・・・。


と考えながらも、体は自然に動いていて、私はソファから立ち上がっていた。



「瞬さん・・・・・・大丈夫?」



私は彼の前に回り、ゆっくりと彼を抱きしめた。私の胸に顔をうずめる彼は、震えていて・・・・・・多分泣いている。


「睦美、ごめん」


しばらく彼を抱きしめていたら、ふいに顔を上げ、謝るとゆっくりと口を開いてくれた。その目には、涙が浮かんでいた。


「ばあちゃんが・・・死んだ・・・」


・・・・・・消えてしまいそうな声で、話す彼の背中を強く抱きしめたが、私は言葉を発することはできなかった。