「うまい」


目尻を下げながら、私が作った料理を褒めてくれる彼は、病院での俺様ドクターと本当に同一人物なのかと未だに思ってしまう。


「瞬さんは、本当は二人いるんでしょう?」


食事が終わり、テレビを観ながらくつろぎながら私は聞いた。


「はぁ?」


意味がわからんといった表情で聞き返す彼に私は、すぐに説明した。


「だって、病院での瞬さんと、私の前での瞬さん、全然違うんやもん」


サラダを食べながら、口元を緩ませると、彼は口を開いた。


「面白いこと言うなぁ。睦美は」


軽くあしらわれたことに、わざとふくれて見せた。もうちょっと、乗ってくれてもいいやん。


「だってほんまに思ったんやもん」


子どものように拗ねる私に、彼は優しい目で見つめてくれ、「睦美だって、人のこと言われへんよ」と笑いかけてくれる。



「私は、裏表なんてありませんよ」


対抗するように、頭を横に振りながら言うと、彼の顔が変わった。


「睦美、誰が裏表あるって言いたいの?」


しまった。ドSスイッチ押してしまった。


「いえ、誰かな?」


視線を斜め上に向けて、とぼけてみるが、そんなことで許してくれるわけがない。