インテリアショップを出ると、私たちはショッピングモールを歩く。
平日とあって、あまり混雑しておらず、少しよそ見をしていても、人とぶつかることはない。
「・・・・・・歯ブラシとか?」
何気なく隣を見上げて言ったつもりだったが、彼の顔色が変わったのがわかった。何かを企んでいる顔。
「なぁ、なんで歯ブラシなんて必要なのかな?」
えっ、なんで必要って・・・食後には歯を磨かないと、寝ている間に虫歯が・・・・・・って泊るって言ってるのと同じやん!
「あっ・・・」
私が立ち止まり、俯くのを覗きこんで、さらに攻撃してくる男は、完全にドSの顔になっていた。
「なぁ、なんで?」
迫りくる悪魔に私は、後ずさりしそうなくらいビビっていた。
その笑顔、やめてください。
「知らん!」
『知らんはなしな』と逃げ道をなくされていなかったので、私は逃げた。
「ふうん。まぁ、いいよ。買いに行こう」
そう言うと、左手を差し出してくれ、その手に私の右手を重ねた。
そっと包んでくれる彼の大きな掌によって、私は守られている気がした。