「先生、私達は、ちゃんと先生に連絡を入れましたから。

そして、私は電話を掛けた上原の代わりに先生を呼びに来ましたから、最終の責任は、佐々木先生が取っていただけますか」


「ふっ、脅し?」


姿勢は変えないまま、口元を片方だけを釣り上げて笑う男は、不気味すぎて寒気がしてきた。


この男に勝てる気がしない・・・・・・。


でも諦めるわけにはいかない。

私は目を閉じて考えた。


しかし、出てくる手段は一つしか浮かばなかった。


「もう!!つべこべ言ってないで来い!!」


私は、偉そうに座っている男に近づいて行き、強引に腕を掴み当直室を出た。

苛立つ気持ちを抑えることができず、エレベーターのボタンを乱暴に連打した。

私の眉間には深い深いしわが寄っていたに違いない。


エレベーターに乗り、三階まで行くと、再び俺様ドクターを病室まで連れて行った。


「ここです」


苛立つ気持ちをできるだけ抑えて、冷静に言い、病室のドアをノックしようとした瞬間に言われた言葉に心臓が飛び出すかと思った。


「いつまで俺の腕を掴んでるつもり?」


うわっ・・・・・・忘れていた・・・・・・。



私は、思い切り俺様ドクターの腕を払い、1メートル程離れた。


「ボーっとしていないで、さっさと行くぞ」



トントントン  


夜中の病院の廊下にノックの音が静かに響いた。


「失礼します」


その声は、さっきまでの刺すような声ではなく、穏やかなものだったので、さっきまでの私の勢いは行き場をなくしてしまった。


なんか、あいつのペースにのまれてるし・・・・・・。


「高井さん、先生が来てくれましたよ」


私は気を取り直し、いつものようにベッドサイドに立ち、患者さんに話し掛けた。


そして、俺様ドクターに高井さんの病状を説明し、「お願いします」と頭を下げた。