その後、臨海線を走り、冬の海をじっと見ていた。


見ているだけで凍えて来そうな海は、静かに波を立てていた。


車内では、私の今お気に入りの曲が流れ始めた。


前に乗った時は、音楽はかかっていなかったが、今日はラジオが流れている。



「なぁ、この歌好きなん?」



口ずさんでいたからだろうか、彼は声を掛けてくれた。



「はい、今一番好きですね」



そう言った瞬間、彼は不機嫌な顔になった。


えっ、睨まれているし。


ちょっとまってよ!!まったく何で怒ってるのかが意味がわからない!



「お前、最悪」



ドスの聞いた声で言われた台詞は、私を硬直させるのに十分だった。


しかもなぜ、「最悪」なんて言われているのか分からなく、泣き出してしまいそうだった。



「どうして・・・・・」



消えてしまいそうな声で呟き、隣を見ると、信号待ちで止まった車のハンドルに頭をつけて付けて腕を預けていた。



「お前さ、俺にも好きなんて言ったことないのにさ、そんな嬉しそうに好きなんて言うなよ」



今、なんて?



私の頭の中で、彼の台詞がリピートされて、私はつい顔をほころばせてしまった。


「わっ、笑うなよ」



慌てて、私に注意する彼の表情を見て、心の中で「ごめんね」と呟いた。


そして、精一杯の気持ちを伝えようとした。



「心配しないでください。瞬さんの方が好きですから」



ちらっと私の顔を見た彼は「わかってる」と嬉しそうに口にした。



「わかってる」なら、あんなに拗ねなくてもいいのに・・・・・・本人には絶対に言えない思いを胸にしまった。