******


「どこに行く?」


用意ができて真っ青な走り屋の車に乗り込むと、彼はゆっくりと車を走らせた。


こんな車に乗っていても、いたって安全運転であることに心底安心する。



「最近できたショッピングモールはどうですか?」


隣から声を掛けると「OK」と笑顔で答え、車を進めた。


この車に乗るのは2回目。前回は夜だったので、あまり良く見えなかったが、車内が良く見える。

意外と車内はシンプルであることがわかった。


そして、運転する彼の様子もよく見える。


「何?」


私の視線に気付いた彼が、横目でちらっと見る素振りもドキドキさせるのに十分なんだ。


「見とれてたの」


わざと、ぶりっこして言ってみると、意外にも耳まで真っ赤にして照れている横顔が可愛らしかった。


「な、な、な何言ってんだお前」



ちらちらこちらを見ながら言う顔が、年上とは思えないくらい動揺しているのがたまらなく私のツボにはまってしまった。


「瞬さん、かわいい」


ハートマークが付きそうな甘い声で言うと、さらに耳を真っ赤にしてあたふたしていた。


めちゃくちゃかわいいし!


こうやってからかうのも面白いかも!



「お前なぁ」


動揺してる。


この顔を病院のみんなに見せてあげたいな。


いつも眉間に皺を寄せて怒っている姿しか見たことないから、こんな一面があるなんて、みんな思わないでしょ。



あぁ、でも、やっぱりみんなには見せたくない。私だけのものなんだ。



「そんな顔、みんなの前でしないでくださいね」


顔を覗きこむようにして言うと、車が止まり軽くキスをされた。


えっ、ここ道路やで・・・。止まったら、後ろの車が・・・。


「信号待ち」


唇を離した彼は、私の頭の中を読み取ったかのように言った。


そっか、信号待ちか。



「何?俺をこんなに動揺させて、ホテルにでも行きたいわけ?」



へ~動揺した事を認めるんや・・・・・じゃなくって!!



「はっ?何言ってんの?」


助手席内で、窓の方へ後ずさりするように私が言うと、「そんな慌てんなよ。お前が俺をからかうから・・・」


・・・・・・やっぱり私の負けだ。