食事の片づけを終えると、寝室にいる彼に向かって声を掛けた。


「瞬さん、私、コンビニへ行ってきます」


『瞬さん』と呼ぶのは、まだ馴れない。


気を抜いたら、『先生』と呼んでしまいそうになる。



音が聞こえない部屋のドアに耳を付けても物音一つしなく、ゆっくりとドアを開けようとした瞬間、後ろから肩を掴まれて「キャー!!」と大声を出してしまった。



「お前、驚きすぎ」



聞きなれた声に振り返ると、目を細め笑っている彼がいた。



「えっ、だって寝室にいたんじゃ・・・」



私はキッチンにいたから寝室からでてきたらわかるはず。


「トイレに行ってた」



えっ・・・・・。




寝室からトイレに行くには、リビングを通らなくてはいけないのに・・・どうやって?



私の頭の中が読めたのか、彼は私の額を人差し指で押すと、笑みを零した。



「お前、ボーっとしすぎ!・・・・・・まだ、慌てなくていいから」



私に背を向けて言うその言葉が、私が答えることができなかったことに対する言葉であることは、容易に理解できた。