「はぁ、俺、全然余裕ないし」
キスの後、抱きしめられ、頭の上から聞こえてきた声は、溜息混じりで少し情けなさそうだった。
「もうちょっとさ、キスくらいスマートにできへんかな・・・俺32やで?」
そのよくわからない反省の言葉に、つい吹き出してしまった。
「やっぱり笑われたし。なんかさ、飯を作ってくれるって言ってくれただけで、キスしたくなるなんてさダサいよな」
なぜ、この人は仕事以外はこんなにも自信がなくなるのだろう。
そんな所にも惹かれていく私は、どっぷり恋に溺れているんだ。
「そんなことないです。嬉しかったです」
彼の胸に顔をうずめて、こもった声で伝えると、「ありがとう」と言うと、私の髪に顔をうずめていた。
グウウウ・・・・・・
「あっ・・・」
気を抜いていたら、お腹が鳴ってしまった。
「色気ないなぁ」
クスクスと笑いながら、抱きしめる力を弱めて、私の両頬を軽くつねった。
つねられた頬を膨らませて「痛い!!」と彼の顔を睨んだ。
本当は、全然痛くなかったが、嫌味っぽく言ってやらないと気が済まなかった。
「じゃぁ、こうやったら治るかな?」
そう言って、彼の顔が近付いて、私の右頬に軽くキスをした。
その瞬間、再び顔が熱くなっていきの動きは固まった。
「あれ?顔真っ赤やで。熱あるのか~?」
なんて言いながら、食事の準備をする背中に「バカ」と呟いた。