「い、意味が分からないんですけど?」
頭の中は混乱していた。
い、今は何時?再び時計を見ると、5時45分をさしている。
えっ・・・・・・。
「えっ、意味って?」
首を傾げて、私の顔を覗きこむようにして聞く彼の頭の上にも「??」が浮かんでいた。
「だから、今は・・・・・・午前?午後?」
私の表情を見て、理解できたのか、フフッと笑い、「朝」とだけ答えた。
「まじですか・・・・・・」
私、泊ったんですか?
溜息をひとつつくと、再びうなだれるように膝に額をつけた。
正式に付き合い始めたその日に、泊って、しかも爆睡なんて・・・・・・色気もなにもないし・・・・・・ってか!
「私、家に連絡してない!」
うわっ、お父さんとお母さん、心配してるんじゃ・・・・・・。
「あぁ、お母さんには言っておいたぞ」
「はぁ?」
自宅の連絡先なんて教えたっけ?
「睦美のスマホが鳴ってて、『お母さん』って出てたから、電話に出た」
「出たけど、何か?」とでも言いそうな口調に、反抗もできなかった。
「で、母に何て言ったんですか?」
余計なことを言ってないよね?
いや、こりゃ、言ってる気がする、目の前の男だけじゃなく、母も。
「俺が体調が悪いのを気遣って来てくれたけど、夜勤明けで疲れていたようで、眠ってしまったって。
それで、しばらくしたら起こして、タクシーで帰るようにいうので心配しないでくださいって」
なぁんだ、変なことは言ってないみたいで安心した。
いや、でも、起こしてくれてないじゃん!!
「でも、お母さんに『あら、先生がおじゃまじゃなかったら泊めてあげてくれますか?』って言われたから起こさなかった」
「・・・・・・」
母の口調とテンションを再現する彼は、ニヤリと笑っていた。
目の前がくらくらする。額に手を当て、大きく溜息をついた。
なんだ、あの母親は。
前からおかしいとは思っていたが、ここまでとは・・・・・・。
「俺って信用されてる?」
ニッコリ笑ってそう言う彼のことを、初めて「バカ」だと思った。
「・・・・・・」
もちろん私からのコメントなんてなし。
何を言っても、おバカさんには通じない。