「奈緒、私ちょっと事務所に行ってくる!」
私は夜診が終わる時間帯に一階に下りた。
診察が終了した診察室は薄暗く、一箇所だけ明かりがついていた。
私は、その明かりの方へ足を進めた。
そっと診察室を覗くと、机に突っ伏している佐々木先生がいた。
「佐々木先生・・・」
声を掛けながら近付くと、むくっと起き上がり、うつろな目で私を見た。
「お前、なんでいるの?」
「大丈夫ですか?」
「あぁ・・・」
明らかに大丈夫な感じではない。
顔は青白く、目はうつろで、呼吸も若干荒い。
「熱は?」
「いや、測ってない」
近くにあった体温計を手に取り、先生の熱を測ろうとした。
「シャツ開けますよ」
「あぁ・・・・・・」
その返事さえも聞こえない位、小さな声だった。
「先生のカルテを取ってきます」
検温している間に、事務所へ佐々木先生のカルテを取りに行こうと、薄暗くなった廊下を走った。