「コホッ、コホッ」


「斉藤さん、大丈夫ですか?」



2月に入り、より一層寒くなってきたので風邪をひく患者さんが増えてきた。


患者さんだけでなく、職員も体調を崩す人が多くなってくる。


最近は、体調を崩した人の穴埋めばかりをしていたので、ほとんど休みなく働いていて、帰るとすぐ寝るような生活が続いていた。


そして、佐々木先生とも病院以外では会うこともなかった。


もちろん食事には誘われている。でも・・・・・・断っていた。



【すみません。最近忙しくて疲れているので、また今度でもいいですか。】



こんな返信をしていた。実際は、今度会う時は、告白の返事をする時であるような気がして、避けていたのかもしれない。



「先生、お疲れ様です」


「あぁ、お疲れ」



病院でも関わることがなく、廊下ですれ違った時に挨拶をするだけだった。



今日は、水曜日。一層寒くなった冬の空は、いつもより少し曇っている感じがして、まるで今の私の心のようだ。



―――白でも黒でもなく『グレー』―――



夜勤である私は、申し送りも受けながら後ろで話している主任の声が耳に入った。



「あの、佐々木先生が風邪をひくとはね」




「そうですよね。

今日は、嫌味の一つもなかったですからね。

いつもあれくらいだったらいいのに。

でも『風邪ですか?』って聞いても、『関係ない』とか言うんですよ。

かわいくないし。でも、相当しんどうそうでしたね」



佐々木先生、風邪ひいたんや。大丈夫かな。