「ありがとうございました」


家の前に着いて、車を降りようと来た時、玄関から出てきた人物の表情に驚いた。


「お、お父さん?」


寒いのに外に出てきた父の顔は、険しかった。


私の声に佐々木先生も驚いたようで

「えっ?お父さん?」

と声を上げ、助手席側の窓を私の背後から伺っているようだった。



「俺、降りるわ」


「いいです。女友達に送ってもらったって言いますし・・・」


「いやいや、女の子がこの車には乗らないでしょ」


「あっ・・・・・・」



この車・・・・・・走り屋風の車だった。


そんなことを考えている間に、佐々木先生は運転席側のドアを開けていた。



「ちょっ、ちょっと待ってください」


私は慌ててドアを開け、外に出た。


暖房に馴れていた体だったが、あまりにも気が動転していて、外の寒さを感じなかった。



「お、お父さん、どうしたの?」


「睦美、連絡もしないでどこに行ってた!」


目の前の父は、普段では考えられないくらいイライラしている様子だった。


そして、佐々木先生の言葉は、父のイライラを増大させるのに十分だった。


「お父さん、申し訳ありません。僕が悪いんです」


うわっ・・・頭下げて謝ってるし・・・。



「ちょっと、頭上げ・・・・・・」


「君にお父さんなんて言われる筋合いはない!」


私の言葉を飲み込むように、父はドラマのような言葉を言い放った。



・・・・・・お父さんが怒っている。


遅くなるときは連絡はするけど・・・心配してくれていたのはわかるけど・・・今の状況は何か違う・・・。



一触即発の雰囲気の中、爆弾を落とす人物がやって来た。


「あら、にぎやかね~。睦美おかえり~。あら、彼氏?」



あっちゃ~。母の登場は、そんな言葉がぴったりだった。


この母親、空気読めてないし。



「お父さん、寒いから入ったら?睦美も彼氏さんもね」


・・・・・・まただ。



母は、再び爆弾を落とした。


母の爆弾を受け、「早く入りなさい」と私達を見ないで言うと家に入った。



「もう・・・・」


「もう帰っていいですよ」と言おうと思ったのに、佐々木先生は、「おじゃまします」と玄関の方へ向かっていた。



えっ、まじですか!



私は、この先の修羅場が怖かった。