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「また二人で来てね」


そう雄哉さんに言われて、私達は店を出た。


正直、告白されてからの会話は頭に残らなかった。



混乱したまま車に乗ると、

「もうちょっと時間ある?」

と聞かれたので、時計も見ずに「はい」と答えていた。



本当にどうしよう・・・・・・。



私の混乱した様子を汲み取ってくれてのか彼は、ある話を始めた。



「なぁ、お前って院長とか副院長にも『ももちゃん』って呼ばれてるんやな」


「えっ、はい」



「それってすごいよな」


「あの院長ならわかるけど、あのかたぶつそうな副院長も呼んでるなんて、想像ができへん」



「そうですか?副院長先生はかたぶつじゃないですよ。食事とかも連れて行ってくださって、色んなお話をしてくださいますし」



そう院長先生や副院長先生は、よく仕事終わりに食事に誘ってくれる。仕事の話もしてくれるが、院長先生は海外旅行の話や副院長先生は趣味の登山の話をしてくれるからとても楽しい。




「えっ、お前、もしかして・・・・・・愛人?」


「はぁ?なんてことを言うんですか!」


とんでもないことを言い出す彼の言葉に、声を裏返らせて否定した。


「だって、二人で食事行くんやろ?」


「誰が二人でって言いました?看護部の何人かを連れていってくださるんです」



「そっか、びっくりしたよ。副院長の愛人に告白したんかと焦った」



『告白』という言葉に、私の旨が異常に動き出すのがわかった。


「そんなわけないですよ」


「よかった、よかった」


どうやら、本気で愛人だと思っていたようだ。
この人は、仕事をしている時の姿と普段の姿のギャップが大きい。



医師としての佐々木瞬はミスを許さない、完璧主義の様に見える。


普段の佐々木瞬は、どこか抜けているところがある。私はこのギャップをどう感じているのだろう。


今後、どう感じるのだろう・・・。



「あの・・・・・・どこに行くのですか?」


ふと気付いたら、走り屋の車は市街地から離れて、海辺を走っていた。


「えっ、別に目的地はないけど?」


「・・・・・・」



「ただ一緒にいたいだけ」



この人は、本当に私の心臓を早めるのが上手い。


かなりの頻脈になっている自分の心臓を隠すように口を開こうとしたが、相手の方が早く口を開いた。