「それからさ、水曜日が来るのが楽しみでさ・・・それは腹立つ感情じゃないって気付いた。

でもさ、俺、正直に言えなくて、あんなわけわからんことをしたわけ」


初めは嬉しそうに話していたのに、だんだん眉を少し下げて話す様子が印象的だった。先生が言う『あんなわけわからんこと』には大いに心当たりがある。




「下心・・・・・・?」



「そう、自分でもアホやと思ったよ。これで引かれたら終わりやのにな。でも笑ってくれたからよかった」


「・・・・・・」


頭が混線状態で、情報が整理できない私は、声を出すことさえできなかった。



「そして、今に至る。やっぱり、お前のことが好きだと実感したわけ」


さっきとは違い、しっかりと強い眼差しで私を見つめて言ってくれた。これまでは、強い眼差しといっても刺すようなものだったが、今は違う。強いが、どこか暖かな眼差し。でも、私は言葉を生み出すことができなかった。




「・・・・・・」


「ごめんな・・・こんなこといきなり言って」


弱々しい声に私までも弱々しく首を横に振った。


「いえ・・・」



「結婚もすぐってわけじゃないからさ・・・」



私とは目を合わさず、自分に言い聞かせるように頷きながら言葉にした。




「あの・・・一つ質問いいですか?」



顔を上げて、彼の目をしっかり見つめて言った。


彼は口元をキュッと結び、首を傾げた。


この仕草はとても優しくて、やはり病院での姿とは別人だと思ってしまう。



「何?」



「・・・・・・つまり、結婚を前提にお付き合いをするということですか?」



深呼吸をして、思い切って聞いてみた言葉は、すぐに彼の元に届いた。



「そのつもりで言ったんやけど」



あっさり肯定されたので、「そうですか」としか言えず、また俯くことしかできなかった。




「まぁ、考えておいて」


混乱している私の様子を理解してくれたのか、先生は私に猶予をくれた。



「・・・・・・わかりました」

と言ったものの・・・自分がどうすべきなのか全くわからなかった。