「あの・・・・・・私のどこが?」
自らは「好き」という言葉は出せず、曖昧な聞き方になったが、彼はゆっくりと私の目を見ながら話し始めた。
「誠泉病院って知ってる?」
「はい。先生のお父様が院長をされている病院ですよね」
―――誠泉病院―――
院長 佐々木義春
脳外科、消化器外科、整形外科、内科などを看板に掲げている病床数300を超えるこの辺りでは知らない人はいない有名な病院。
実力があるだけではなく、患者さんからの評判も良い。
院長先生は、脳外科の権威でテレビや雑誌で紹介されることも多い。
「そう、そのことをみんな知ってるからさ、周りは俺のことを腫れ物に触るように接するんや。
同級生でさえ親に言われてるのかよそよそしいしな。
まぁ、上野山とさっきの雄哉とか付き合いがある奴は別やけどな」
あんな大きな病院の息子として生まれたから、何でも手に入って、何不自由ない生活をしてきたのだと勝手に思っていた。
でも、そんなことがあったなんて想像もしていなかった。
「でも、お前は違った。あの時『つべこべ言ってないで来い!』って無理に俺を引っ張って行った。
こんな女初めて会って・・・・・・気になってた。
初めは・・・・・・偉そうに言われて腹が立っただけやと思って、次に会ったら嫌味の一つでも言ってやろうと考えていたのに、
俺の質問には完璧に答えるし、用意して欲しい物を言う前に用意してるし
・・・・・・文句のつけようがなかった。
こんな看護師、なかなかいないなぁと思った」
両手を組んだ上に顎を乗せて、じっと見つめながら言われる最高の褒め言葉に、私はどうしていいのか分からず、俯くばかりだった。