「佐々木くんは、外科医としての腕は確かだけど、仕事にのめり込みすぎて、看護師にきつく当たることがあるから、それがなおればな・・・」
と近藤先生は言っていた。
「うちの病院としては、かなり助けられてるよ。患者さんには人気があるからね」
そんな話を聞いているだけでよいのだと思っていたら、急に話を振られた。
「ところで2人はいつから?」
院長先生の質問はストレートで、私たちは黙り込んでしまった。
しかし、答えないわけにもいかないので、瞬さんが「半年ほど前からです」と正直に答えていた。
「半年って言ったら、佐々木先生がうちに来てくれるようになって10ヶ月くらいやから・・・・うわぁ、色男はやるな・・・」
「お前、仕事せんと彼女ばっかり追ってたんやろ!」
「いえ・・・」
返答に困るようなことを言われ、瞬さんは言葉を失っていた。
「それにしても半年で結婚を決めるとはな・・・ももちゃん可愛いからな」
「そうやなぁ、俺も20歳若かったら、狙ってるな」
酔っ払っている院長先生と近藤先生は、顔を見合わせて「あはは」と笑っていた。
結局、この奇妙な会の意味するところは、よく分からず、私たちは帰りの車内で大きなため息をついた。
なんか、今日1日かなり疲れた・・・。
私は、助手席から見える彼の横顔を見て「お疲れ様」と言った。
私の言葉に「睦美も、お疲れさん」と言うと、笑顔を向けてくれた。
どうして、この人は私をドキドキさせるのが上手なんだろう。
あぁ、また瞬マジックにかかってしまうんだ。
あなたの全てを知りたい。
そんな独占欲まで出てきてしまう。
でも、過去の彼よりも、今隣にいることができるのが一番幸せなんだと、この時思った。
きっと、この人となら一緒に歩いていける。2年間離れたとしてもやっていけるような気がしたんだ。