「みんな、おはよう。ちょっと集まって!」
三谷師長の一声で、私達は立ち上がり、師長の元へと集まった。
三谷師長は、40代とは思えないくらい若々しく、美しい。
普段は温和な性格だが、怒るとめちゃくちゃ怖い。
若い頃、私の前の職場で働いていただけあって、私が言うのはなんだが、実力は確かに持ち合わせている。
私が尊敬する人の一人である。
仕事をしすぎたせいか、する気がないのか未だ独身。
「みんな、もう知っていると思うけど、今日は新しい消化器外科の先生が来てくれているので、きちんと挨拶するように」
その師長さんの言葉によって、みんなは顔を見合って、最終チェックを始めた。私は一番後ろで、束ちゃんとあきれ顔をしていた。
「おはようございます」
声が聞こえてきた、ナースステーションの入り口の方を見ると、事務次長の上野山さんが顔を覗かせていた。
濃紺のスーツになんとも微妙な柄のネクタイをした、小柄で小太りの32歳の隣に180cmはこえているだろうか、すらっと背が高く、真っ黒な髪は短く整えられていて、いかにも爽やかな雰囲気を醸し出しているイケメンが立っていた。
何!この差は!!
二人は本当に同じ男か?と思うくらい差がありすぎる。
しかも、上野山さんの話によると、この二人、高校の同級生で仲も良いらしい。
しかし、みんなこんな話は聞いていないだろう。
みんなイケメンドクターに釘付けだ。
佐々木 瞬 32歳
県立医大の消化器外科勤務、父は県内でも有名な病院の院長
高身長、高収入、将来は院長、そしてイケメン
彼女達には十分な情報だ。