「・・・・・・別れましょう」


考えて言ったのではなかった。


口が勝手に動いていた。



それと同時に再び涙がとめどなく流れ出した。


そのことを悟られないように私は、ソファから立ち上がると、彼に背を向けた。



ゆっくりと足を進めて、玄関の方へと向かった。


追いかけてくれると信じていたが、来てくれなかった。



私は、彼の部屋を出ると、崩れそうになるのを我慢してエレベーターに乗った。


自分の気持ちと同じように落ちていくエレベーターにしがみつくように壁にもたれ、天井を見上げていた。



いつどこで誰が乗ってくるともわからない場所で、声を上げて泣いていた。


後先考えることなく、泣いていた。


マンションから出ると、目的もなく歩き続けた。


周りも見ずに歩いていると、呼ばれるはずもない名を呼ばれた。


しかし、待ち望んでいた人物の声ではなかった。



「ももちゃん?」



泣き腫らした顔を上げると、目の前には高倉さんの結婚式にいた立川さんが立っていた。



「どうしたん?そんな泣いて・・・何があったの?」



すぐに私に近付くと私の顔を覗きこみ優しく聞いてくれた。



「・・・・・・」



この時の私は、どうかしていた。


無意識のうちに目の前の彼の胸に体を預け泣いていた。



「ど・・・どうしたん?」



私は、彼の優しい声に何も言うことができず、ただ泣いていた。



「ももちゃん?」



彼は泣き続ける私の背中にそっと腕を回すと、私を抱きしめた。