「で、2人は結婚するつもりなんでしょ?」
あっ、その話題になりますよね・・・・・・。
最近、全くと言っていいほど『結婚』という言葉が出て来ないし・・・というか、瞬さんがわざと出してこないようにしか思えないんだけど・・・・・・。
「あぁ、まあ」
少し俯きながら言う彼の様子に私は自信をなくした。
なんではっきり言ってくれないの?
以前ははっきり言ってくれたのに・・・・・・。
「じゃぁ、アメリカに睦美さんも連れて行くの?」
えっ?
アメリカ??
何の事?
私はすぐに瞬さんの横顔を見たが、彼は髪を触り、気まずそうにしていた。
「母さん・・・それは・・・」
はぎれの悪い言い方をしている彼を見ていたが、私には何も言ってくれなかった。
「瞬、お前、睦美さんに話してないのか?」
話してないとは?何?
「あぁ、これから話すつもりやった」
私は不安でしかたなかった。
きっと、今にも泣き出しそうな顔をしていたに違いない。
私を見る御両親、特にお母様の表情が悲しそうだったから・・・・・。
「お前、アホか!!」
お父様が急に大声を上げたので、私は驚き、泣くという感情はどこかへ消えてしまった。
私はとにかく、唖然とするばかりで、声なんて出る状態じゃなかった。
「そんな大切なことを話さんと、何が結婚じゃ!!
睦美さんに失礼やろ!お前がそんな中途半端な気持ちなんやったら、結婚は許さんぞ!」
・・・・・・えっ?
『結婚は許さんぞ!』という言葉が頭から離れなかった。
「お前がそんなアホやとは思わんかった。
出て行け!ちゃんと全て話すまでこの家の敷居をまたぐな!」
さっきまでの穏やかな顔からは想像できないくらい険しい表情で、お父様は瞬さんを怒鳴りつけた。
「瞬・・・お父さんの言う通りにしなさい。睦美さん・・・・・・ごめんなさいね」
お母様は呆れた表情で瞬さんに言うと、私に謝ってくれた。
「いえ・・・・・・」
私は頭が混乱していて、言葉が出なかった。
「はぁ・・・・・・」
大きな溜息をつくと、瞬さんは何も言わず立ち上がった。
その姿を見て、私も立ち上がり、「失礼します」と頭を下げて、リビングを出ていく瞬さんについて行った。