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「着いたよ」
そう言われて車の中から見た建物は、豪邸という言葉がぴったりだった。
私は口を開けたまま、唖然とするばかりだった。
さすが・・・・・・誠泉病院の院長宅やな・・・・・・。
そう冷静に分析すつ自分がいたことに驚いた。
「すごい・・・」
口から出てくるのはそれだけ。
ゆっくりと走った車は、敷地内のガレージに向かった。
そしてさらに目がくらみそうなくらいの衝撃を受けた。
・・・・・・高級車ばっかりやん。
車に詳しくない私でも知っている車が3台並んでいた。
「・・・・・・すごい」
私は、「すごい」という言葉以外は忘れてしまったかのように、そればかりを連呼していた。
「睦美・・・」
助手席でキョロキョロと挙動不審な動きをしていると、急に呼ばれた自分の名に勢いよく振り向いた。
「はい!」
その瞬間、目の前に瞬さんの顔があり、少しだけ唇が重なった。
「えっ?」
私は何が何だか分からず、驚くばかりだった。
「少しでも緊張がとけたらと思って・・・」
悪戯な笑顔に・・・緊張とは別のドキドキが増えてしまいましたから。
「めっちゃびっくりしたやん」
私がふくれていると、彼は私の頭を優しくなでてくれた。
「睦美は、いつも通りにしてたらいいんやで。そのままが一番魅力的やから」
そう言うと、もう一度、軽くキスをして、「行くよ」とドアを開けた。