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「あ―――っ!もう最悪!!」


回診が終わった後、ナースステーションに戻って来た木村さんは不機嫌そのもので、肉食獣のように吠えていた。


「わけわからん質問されて、答えられなかったら、『君、一年目?』とか言われたし!」


目を吊り上げて、佐々木先生の口真似をしていた。それがまた似ていたので思わず笑いそうになるのを堪えた。


うわっ、嫌味っぽく言われたんだ・・。


でもいい気味かも。


一方、木村さんの隣で座っている束ちゃんは、青白い顔をしていた。
自分が佐々木先生の機嫌を損ねた責任を感じているようだ。


「今日の外来遅番の子、かわいそ~」


どこからともなく、そんな声が聞こえて来て気がついたが、外来遅番は私だった。

外来遅番とは、外来の夜診が終わるまでの処置室の当番のことである。

「私やわ・・・」

さすがの怒られたことがない私でも、超がつくほどの不機嫌な佐々木先生に恐れをなしていた。


「ももちゃんが餌食か・・・かわいそうに」

そう言うのは、奈緒だった。


「かわいそうって言うなら、遅番代わってよ」

「ヤダ。今日は、圭とデートだから」

「はいはい」


奈緒は、高校時代から付き合ってる彼氏が海外勤務から帰ってきたところでラブラブ中。

だから、完全拒否された。

まあ、外来の処置室の当番だし、事務の子がいるし、あんまり関わりはないから大丈夫かな。

そう、軽く考えていた。