夏休みを合わせて旅行でも行きたいね、なんて話していたが、結局、合わせることができなかった。


もうすぐ9月の半ばだというのに、暑い日が続く中、私達は病院の中で季節も関係なく涼しい中働いていた。


私と言えば、主任になり5ヶ月近くが経ち、ようやく忙しさにも馴れていて、充実感を得ることができていた。


ナースステーションで、一人仕事をしていた時、後ろから声を掛けられた。


「ももちゃん、だいぶ慣れた？」


師長さんが、少し安心したような表情で声を掛けてくれたのを見て、「はい」と笑顔で答えた。


毎日毎日、忙しくてかなり疲れていたが、いつも瞬さんが励ましてくれて、乗り切ることができた。

少しでも、疲れた顔をしていると「大丈夫？」と声を掛けてくれるし、抱きしめて欲しい時は、優しく抱きしめてくれる。


ドＳのとことは相変わらずだけど・・・。


彼の存在が、私に安心感を与えてくれる。


逆に、私は彼に安心感を与えることができているのだろうか？




「採血結果はどうなってんの？」


あぁ、今日も不機嫌だ。


回診が終わり、ナースステーションに入って来た佐々木先生は、奈々ちゃんに冷たく言っていた。


「すみません」


謝る奈々ちゃんに無言の圧力を掛けていた。


さすが、俺様ドクター健在だわ。


「佐々木先生、お疲れ様です」


瞬さんは、三谷師長を見るなり、驚いた顔をしていた。


奈々ちゃんにきついことを言っているのを見られてバツが悪い感じように受け取られる。


「ごめんなさいね。いつもご迷惑かけて」


眉を潜めながら師長さんが言うと、「いいえ」と静かに言った。


うわぁ、絶対に「ほんま、めっちゃ迷惑掛けられてます」なんて思ってるのに！


「何かあったら言ってくださいね」


「あっ、はい」


そう言うと、ナースステーションから出ていってしまった。


瞬さん、いつもと違うし。師長さんには弱いのかな？


私は、彼の背中を見ながらそう思った。