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そして、木曜日。


第2回目の勉強会も高評価のうちに終わり、とうとう決戦の時がやって来た。


「睦美」


街灯のわずかな明かりをうけて、いつもの外車にもたれかかるようにして立っている神尾先生はやはり絵になるのが悔しい。


彼は、右手を少し挙げて私を向かい入れた。


「すみません」


「とりあえず、話ができる場所へ行こうか?」


私は頷くと、助手席に乗った。


そして、着いたのは、おしゃれなイタリアンの個室。


この人は、どうしてこの土地に詳しいんだろう・・・ふと浮かんだ疑問もすぐに消えてしまうくらい緊張していた。



トントントン



個室のドアがノックされ、少し顔を見せた店員は、

「神尾様、お連れ様がいらっしゃいました」

と丁寧に言った。


「入ってもらって」


そう言うも、私は状況を把握できずに唖然とするばかりだった。


えっ?


誰か来るの?



私は少し背筋を伸ばして『誰か』を待っていた。



「睦美、こっちおいで」


向かいに座っていた私に、隣りに座るように、椅子を軽く叩き、私はそれに従った。



いったい、誰が来るんやろう・・・。


そう思い、ドアの方へ目をやるとそこにいた人物に驚愕した。



「えっ・・・・・・」


目を丸くして驚いていたのは、瞬さんも同じだった。


「お前・・・睦美は来ないって・・・」


肩をひそめながらそう言う瞬さんに、神尾先生はとぼけた様子で「あっ、そうだった?」なんて言っていた。


「まぁ、座ったら?」


神尾先生の落ち着いた表情と言葉に少し苛立った様子だったが、私達の前に座り腕組みをし、目の前にいる敵を睨んだ。


「睦美、こっち来い!」


瞬さんの言葉に我に返り、私は席を立とうしたが、「待って」と神尾先生に腕を掴まれた。


その顔を見ると、とても寂しそうな表情をしていて、私の胸も痛んだが、「ごめんなさい」と言い、彼の腕を払った。


そして、隣に座ると瞬さんは、満足気に口角を上げていた。