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「どうぞ」


久しぶりに来た瞬さんの部屋。2週間前と全く変化していない部屋はとても懐かしく思えた。


「今、お茶入れるから座ってて」


「あっ、私がするよ」


キッチンに向かおうとしたが、「睦美は疲れているから座ってろ」と入ることすら許されなかった。


私は、ビニール袋からもらってきたお弁当を取り出して、瞬さんが来るのを待っていた。


「おまたせ~」


コップにお茶を入れて持って来てくれた彼が、私の隣に座り、二人でお弁当を食べ始めた。


「おいしいね」


「そうやな、睦美が作る飯の方が旨いけどな」


・・・・・・さらっと、何てこと言うのよ。


私の顔が一気に真っ赤になるのがわかった。


そんな私の顔を見つめている彼の方は見れずに俯いた。


「睦美かわいい」


そう言って、私の頬にキスをすると、残りのご飯をかきこんでいた。


自分が作った料理を褒められるのは馴れていない。


今までの彼氏に手料理を作ったことなんてなかったから。


もちろん、神尾先生にも。


彼との食事は100%外食だったから、彼の部屋で料理することなんてなかった。



「あっ、瞬さん、束ちゃんと食事に行ったって本当?」


急に思い出したことを単刀直入に聞いてみた。


「あぁ、行ったよ」


「へ~本当やったんやぁ。瞬さん、言ってくれなかったから、束ちゃんが嘘ついてるんかと思ったよ。ところでで、なんで?」


そう、どうして二人が食事へ行くことになったの?いきさつは?


「あいつが話したいことがあるからって」


「話?」


「あぁ、睦美のこと」


「えっ??私のこと??」


「あいつ、最近睦美が元気ないって・・・普通俺にそういうことを言うか?喧嘩売ってるんかと思ったし」


少し、むっとした表情をしながら彼は、ソファから下りて、ローテーブルに右肘をつけて、床に座りこんだ。