「私って、こんなにもきつく接してる?」


年下に私は何を聞いているんだろう。


でも、考えるより前に、聞いていた。


「いえ、俺ら患者にはいつも笑顔で接してくれていて、かなり癒しでしたよ。

でも、ナースステーションにいる時は、真剣に後輩の指導とかしていてギャップにやられました」


そんなこと、さらっとよく言えるよね。ってか、ナースステーションの中をどれだけ見てるねん!


「ギャプね・・・・・・」


「百井さんは、今彼氏いますか?」


「プッ・・・」


私は、飲んでいたウーロン茶を吹き出しそうになった。


「あっ、いきなりすみません。

あの・・・・・・もう気付いていると思うんですけど・・・・・・

俺、百井さんのことが好きなんです。もし良ければ、付き合ってください」



彼の気持ちには気付いていたけど、面と言われると・・・。


何と答えたらいい?


私は26歳、あなたは21歳・・・・・・そんなことは問題じゃない。



「ごめんなさい。患者さんだった北村君を恋愛対象とは見ることはできない・・・」


私がゆっくりと言葉を選びながら伝える間、北村君は柔和な表情で私を見つめていた。


「そっぁ・・・普通に出会いたかったな・・・」


溜息混じりの声で言う彼は、先程とは違い、目を閉じ眉をひそめていた。


「でもさ・・・・・病院では優しくされて、勘違いしてるだけやって。普段はそんなに優しくないし」


私は、歯切れ悪く、俯きながら話していた。


「ははっ、自分で優しいって!」


意外な声が聞こえてきたので、私は顔を上げて彼の顔を見た。北村君は、白い歯を見せて笑っていた。


「いや・・・それは・・・」


「百井さん、俺に優しくしてくれたことないやん。

体拭いてって言っても断られたし、ごはん食べさせてって言ったのに、食べさせてくれなかったし」


唇を尖らせて、拗ねたように言う彼に、つい笑ってしまった。


「ふふっ、北村君なんで入院していたのかな?」


「急性肝炎です・・・」


「手足は動いたよね?」


「はい。すみません」


「ふふふふ・・・」


私達は、顔を見合わせると、お腹が痛くなるくらい笑い合った。