「お疲れ様です」
夜勤が終わり、私と束ちゃんは、ナースステーションを出て、廊下を歩いていた。
「ほんま疲れたし」
救急3件の全てに対応してくれた束ちゃんはぐったりしていた。
「1件でも私が行ったら良かったね」
いつもなら2人共、手が空いていたら、交互に行くのだが、昨日はなぜか「俺が行く!」なんて全て行った結果、こうなってしまった。
「だってさ、佐々木先生に怒られそうやん」
手を頭の後ろで組み、私の方を少しだけ見て、そう言うと、舌を出しておどけていた。
「はぁ?意味わからんし」
「え~佐々木先生って、独占欲強そうやし。あんなイケメンとふたりきりにさせたってばれたら、殺されそうやん」
「・・・想像力が豊かなこと」
私は「ふふっ」と笑うと、女子更衣室に入った。
埃っぽい更衣室に入ると、私は端に置いてある丸椅子に腰を掛けた。
「はぁ・・・・・・」
束ちゃんのお陰で、あまり忙しくなかったが、同じ建物に彼がいることでなんだか気が気でなかった。
再び溜息をついて、遠くの方で患者さんを呼び出す事務の女の子の声が聞こえ、高い位置にある窓からは、光が差し込んでいた。
「も~も、まだいるの?」
更衣室の外から束ちゃんの声が聞こえ、現実に戻された。
「は~い。どうしたの?」
更衣室から出ると、束ちゃんは笑顔で立っていた。
「あのさ、今日の勉強会の準備、俺も手伝うわ」
「えっ?でもいよ。束ちゃん、疲れているから寝たいでしょ?」
「気にするな!」
そう言うと、階段を急いで降りて行ってしまった。
なんだろう・・・いきなり・・・。
まぁ、手伝ってくれるならいいか。