「ずっと一緒にいようね」
なんて言葉を信じて、このまま結婚できるのだと思っていた。
この時の私は、仕事をすることが辛くて仕方なかった。
ドクター同士の確執や看護師同士のいじめなど、見ているのも嫌だった。
別に自分がいじめられているわけでもなかったが・・・とても居心地が悪かった。
1度だけ、そのことを彼に話したことがあった。
「そんなこと大学病院では、よくある話じゃない?権力を持つ者が上に立つ。
他の者を蹴落としてでも上へ行く。
まぁ、僕はあんまり好きじゃないけど。
睦美、そんなこと言ってたら、この先どうするの?」
なんて言われたので、2度と仕事上の愚痴は言わないことにした。
私の本音は・・・すぐにでも辞めて結婚したかったのだ。その考えは甘かったらしい。
いつものように外食をしながら、たわいもない話をしていると、思い出したかのように彼は大変なことを言いだした。
「僕、来月からアメリカに行くことにしたから」
まるで、国内のどこかに出張に行くくらいの軽さで、彼は言った。
「えっ?どのくらい?」
私は驚き彼の顔を見つめて聞いた。
彼の言い方では、2週間とかそういうレベルではない様な気がした。
「えっとね、2年くらいかな」
メインのお肉を食べながら、またしも「ちょっと行ってくる」みたいな言い方をしたので「そうなんだ」と答えていた。
「それで、睦美・・・・・・」
そう言い掛けた時、期待してしまった。
「一緒に付いて来てくれる?」という言葉を。しかし、現実はそう甘くなかった。
「睦美、仕事頑張ってね」
目の前が真っ暗になり、何も答えることができなかった。