******
「はい、救急ですね」
申し送りも済み、少し落ち着いてきた所で、救急要請の電話が来た。
「55歳男性 右半身のしびれ―――――――」
束ちゃんは当直室の神尾先生に内線をかけていた。
「はい、お願いします」
束ちゃんは電話を切ると、すぐに「じゃぁ、行ってくる」と言い、ナースステーションを出て行った。
その後も3件ほど救急要請があったが、束ちゃんが全て動いてくれたので、神尾先生に直接関わることはなかった。
「はぁ、疲れた」
「お疲れ~」
朝方、さすがに疲れた様子だった束ちゃんは、ナースステーションの机に突っ伏していた。
「でも、神尾先生でよかった。佐々木先生だったら俺、死んでた」
「コメントしにくいことは、言わないでください」
目の前の山のようなカルテに記録をしながら、軽くかわしていた。
「ははは・・・そうやな」
もうすぐで眠りについてしまいそうな声の束ちゃんは、そのまま動かなくなってしまった。