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「おいしい!!」


目の前の料理は、どれもおいしくて、自分の顔が綻ぶのがわかった。



「よかった。俺、こういう店知らないから、姉ちゃんに教えてもらったんですよ」


嬉しそうにそう言う北村君は、しっかり私を見つめていたので、思わず目を逸らしてしまった。



「北村君、今日は話し方が違うね」


いつもなら、「ももちゃん、元気~?」なんて、子どもみたいな話し方なのに。


「・・・・・・緊張しているからかな?百井さんの私服を初めて見たから」


えっ・・・。


私、そんな緊張させるような服装してないし。


そうか・・・・・・白衣姿しか見てないもんね・・・・・・。


ってか、普通、白衣姿にドキドキするものじゃないの?



「何、バカなこと言ってるんよ!そう言えば、北村君って大学生なんでしょ?何学部?」


とにかく、話題を変えたかった。


北村君の感じだと、女の子が多い学部で女の子に囲まれてそう。


「看護学部です」


「えっ・・・」


彼の予想外の言葉に声を詰まらせてしまった。


「やっぱり知らなかったんやぁ。しかも、俺、百井さんの後輩」


なぜか余裕の表情でVサインをする彼を見ていた私はかなり驚いた顔をしていただろう。


「じゃあ、看護師を目指しているんやね」

こんなつまらない言葉しか出ないくらい驚いていた。


「はい!」


私のつまらない言葉にも、自信満々に答える彼が眩しく思えた。


「でもなんで、私の後輩ってわかったの?」


そう、私はどこの大学を出たかなんで話した覚えもない。


「百井さんは有名ですから」


ニッコリ微笑む北村君の表情と反して、私は過去の記憶をグルグルと遡った。


私、何かやらかしたのかな?



「ははっ、百井さん百面相してますよ。心配しないでください。良いことですよ。
学部長がめちゃくちゃ褒めていましたよ。優秀だったって」


「・・・・・・」


面と向かってこんなことを言われると恥ずかしい・・・。


「なんか、百井さんって病院とイメージが違いますね。

なんか、病院だとキリッとしていて『かっこいい』けど、今は『かわいい』感じ」


「よく、恥ずかしげもなくそんなこと言えるね」


私は照れ隠しにわざとキツイ口調で言い放ったが、当の本人はなぜか笑顔で、

「あっ、病院での百井さんだ」

と喜んでいた。目の前の人物はギャップに喜んでいるかもしれないが、私は軽くショックなんですけど・・・。