「これ、睦美のために選んだんだよ」
・・・・・・私のため?それって・・・どういうこと?
混乱する脳内は、整理することなんてできずに、ただ呼吸をするように命令するのみだった。
「睦美、僕と結婚して欲しい」
まっすぐな瞳で、はっきりと言われると、思わず「はい」と言ってしまいそうになったが、ギリギリでそれは避けることができた。
今なんて?
なんてとぼけた質問は通用しない。
目の前にはダイヤの付いたたてづめの指輪。
そして真剣な眼差し。
なぜ、こんなことをするの?
今更・・・。私はもう・・・。
「ごめんなさい」
やっぱり無理です。あなたとは・・・。
頭を下げて謝ると、彼は何も言わないで顔を上げると、
指輪の入った箱をテーブルに置き、肘をつき重ねた両手に顎を乗せて、少しの笑みを零して私を見つめていた。
なぜ、こんなに余裕があるんだろう。