「じゃぁ、案内してもらえる?」


「はい・・・」


私は目を閉じて覚悟を決めて、返事をするとナースステーションを出た。



ロビー、受付、診察室、処置室、検査室、放射線科、救急室、栄養室など、とりあえず院内をくまなく紹介し始めた。



どこに行っても、「かっこいい」なんて声が聞かれた。



「ここが職員食堂です」



私は、まだ誰もいない職員食堂を案内するとすぐに次の理学療法室へ行こうとしたが、そうはさせてくれなかった。



「睦美、元気にしてた?」


「・・・・・・」



私は、体全体に力を入れて、目を逸らした。



「どうして連絡してくれなかったの?アドレスも変えたみたいだし」


逸らした視線を追い掛けるように彼は、私の顔を覗きこんできた。



「神尾先生、次に行きましょうか。時間がないですから」



私は逃げるように言ったが、逃がしてはくれなかった。