「・・・・・・ごめんなさい」
小さな声で謝ると、
「なんで睦美が謝んの?悪いのはあいつやろ?それか心まで許したから謝ってるの?」
冷静な口調で言う彼の顔を見て、「ち、違う!」と訴えた。
暗闇だったが、彼の表情が優しく微笑んでいるのがわかった。
「ごめん、変なことを言って。俺は睦美を信じてるよ」そう言って、頭をなでてくれる。
「あとは、どこも触られてない?」
「腕とか、肩だけかな・・・・・・」
私が呟くように言うと、
「『だけ』じゃないやろ!あんな奴が睦美の肩に触れたと考えただけで腹が立つ。しかも、キスまで・・・1発いや100発くらい殴っておいたらよかった」
敵意むき出しに感情をあらわにしている瞬さんが珍しくて、そして嬉しくて、つい笑ってしまった。
「さっき泣いていたと思ったら、もう笑ってるし」
彼の表情は、きっと悪戯な笑顔。
声のトーンで表情が細かく想像できる。
「だって・・・・・・」
口を尖らせて、拗ねた感じで言うと、
「俺が全部消してやるから」
彼から感じたキスは、私の奥まで届き、今日あった嫌なこと全てを外に吐き出させてくれた。
「そんな声出すなよ」
どんどん深くなるキスに無意識のうちに声を出してしまっていたらしく、それを指摘され私は真っ赤になっていただろう。
苦しそうな声で耳元で囁かれると、私の体は鳥肌が立つほゾクッとする。
「今日は、我慢する」
彼は、私の耳元で囁くと、優しく抱きしめてくれた。
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週明けに仕事へ行っても、今回の事件のことは全く話題になっていなかった。
なぜなら瞬さんが警察で根回しをしてくれたから。
「病院勤務なので患者さんにご迷惑がかかるので、あまり公にならないようにお願いします」と。