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「最近、ももと夜勤のこと多いよなぁ」


誰もいないナースステーションで向かいに座る束ちゃんは笑顔で言った。


「そうやね、今日の当直のドクターは?」

「佐々木せんせー」


束ちゃんは、嫌そうな顔で答えた。

話を聞くと、大腸カメラについた時、散々いじめられたそうだ。


「俺、あの先生と相性悪いからな・・・」


頬杖をついて、ため息交じりの声で言っていた。


「束ちゃんが勉強しないのが悪いんでしょ?」


「うわっ、きついこと言うなぁ。ももさぁ、最近佐々木先生に似てきたんじゃないか?」



「は?意味わからんし」

私が眉間に皺を寄せ、反論しようとした時、外線が鳴った。


「救急かな?」

私が席を立ち、電話に手を伸ばした。


この病院は救急指定なので夜勤中、何件か救急車が来る。


私は窓際にある電話の受話器を取ると、予想通り救急要請の電話だった。


 40代男性 妻がお風呂から出てきた時にリビングで倒れていた・・・。


 佐々木先生、放射線技師さんに連絡を入れて数分後、救急室には明らかに「寝てました」という格好の俺様ドクターが現れた。


「まだ来ていないの?」


頭の後ろを掻きながら、救急室の椅子に足を組んで座り、頬杖をついていた。


救急車はすぐに到着し、救急隊員と奥様から事情を聞いた。