「まあ、先生飲んでください」
そう言うのは、天然なのか狙っているのかどっち?
彼が車で来るのを知って、ビールをすすめるなんて、泊って行けって言ってるのと同じだし。
「いえ、車で来てるので・・・」と言って断る。
そうそう、断るよね。
しかし、しかし、しかし・・・母はただ者ではなかった。
「じゃぁ、泊っていったらいいやん、ね?お父さん」
おい、おい・・・・・・。
「あぁ・・・」
ほら、お父さん、曖昧な返事になったやん。
「ねっ、お父さんもいいって言ってるから、飲んでね」
・・・・・・お父さん「いい」って言ってないし。
そんな私たちの唖然とした雰囲気も気にもせず、ビールをグラスについでいた。
ここまできたら、完全にお母さんのペースだ。
結局、酔っぱらってしまった父は、リビングで寝てしまった。
「睦美、お布団用意しておいたから、自分の部屋に持って行きなさいね。多分使わないと思うけど」
ニヤニヤしながら母は、立ち去った。
どういう意味なのよ・・・・・・。
「なぁ、睦美のお母さんって・・・ぶっ飛んでるな」
自分の母親ながら恥ずかしい。
「はぁ」
大きな溜息をつくと、隣の彼を見て、笑みを零した。