数分後、1台のパトカーがやって来て、男は連れて行かれ、私たちも事情聴取を受けることになった。



「あっ、瞬さん、腕は大丈夫?」



警察署へ向かう車の中で、私は彼に聞いた。



あれ?


刺されたの左じゃなかったっけ?


彼の左腕を見ても、ジャケットは全く汚れている感じではなかった。



「あはは・・・何かね、痛いと思っていたんやけど、気のせいやったみたい。持って行かれたカッターを見たらさ刃が出てなかったし」


と、のん気に笑っていた。



「はぁ?私がどれだけ心配したと思ってるんよ!」


「まぁ、無事やったんやからいいやん」


この人は・・・なんてお気楽なんやろう。


あれがカッターナイフじゃなくて殺傷性の高いものやったら殺されてたかもしれへんやで!


そんなことになったら、私・・・・・・。我慢していた涙が再び溢れだした。



怖かったのもあるが、瞬さんに何事もなくてよかった・・・・・。



「睦美・・・怖かったね」


「うん・・・」



「ごめん、すぐに駆けつけることができなくて・・・」



私は静かに首を横に振った。


悪いのは私だ。


不自然に毎日バスで会っていたのに気付かなかった私が悪い。